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弥生後期から卑弥呼の時代へ ベールを脱いだ「弥生のIron Road 和鉄の道」
淡路島 五斗長垣内遺跡の謎 シンポ2010.11.21. 聴講 して
 1.五斗長垣内遺跡の概要 
 2.五斗長垣内鍛冶遺跡の役割と時代的位置づけ
 3.「播磨灘と五斗長垣内遺跡を考える 瀬戸内をめぐる交流・地域間関係」
 4.弥生時代後期 近畿でも急速に実用鉄器化が進んだことを示す石の刃物の変化
 5.まとめ

  2. 五斗長垣内鍛冶遺跡の役割と時代的位置づけ
         村上恭通氏(愛媛大学東アジア古代鉄文化センタ長) 講演「弥生人が目指した鉄器化社会」より整理 
激変する弥生時代の後期 弥生の戦の時代 高地性集落が現れ、実用鉄器が西から東へ急速に普及していった時代であるが、
村上氏が注目するのは 弥生人の鉄器に対する価値観が地域によって大きく異なっていることに注意する必要があると指摘する。
日本では鉄素材が自給できずせ、朝鮮半島の鉄に頼っていた時代である。
この時代 鉄器や鉄素材を自由に得られる地域は限られ、地域によって「鉄」の価値観がそれぞれ異なっていて、
鉄製武器や船載鉄器に対する信仰[威信財]に地域差が生じていた。
 朝鮮半島に近い北部九州では 鉄素材の量も質もそしてその加工技術を他の地域に比べはるかに優れ、日用鉄器・利器を充実化する       社会に入っていたという。そして 西日本から関西地域では その中間的様相を呈するが、鉄素材も十分でなく 技術も遠く北部九州に及ばない。 一方 中部・関東では 鉄素材の供給はままならず、非日常的な鉄器を求める社会であった。関西以西では集落出土土器が多い地域と埋葬跡出土土器の多い地域の相違が顕著であった。
 


【参考】弥生時代の地域別鉄器出土数の変遷   (シンポとは別資料から採取し、補足添付しました)

 
弥生時代後期 北部九州と関西以東の鉄器の比較 写真中央は五斗長垣内遺跡出土鉄器と鉄片
弥生後期 西から東へ普及してきた実用鉄器の先端技術の先端はちょうど丹後・播磨・淡路・徳島の南北ライン近辺にある。
それより東側では まだまだ石器が中心の時代である。
しかし、この時代 急速に鉄器化が進んでゆく時代であり、かつ 集落が地域集落から地域連合・首長国へと集団化が進み、
西日本・関西では戦いが頻発する弥生の戦さの時代、高地性集落が起こり、鉄器への需要がさらに高まる時代である。
そんな先進技術 鉄伝播のフロント・先端部にあたる淡路。近畿の鉄器化の詐欺崖の位置に五斗長垣内遺跡も位置づけられる。
村上恭通氏は この時代背景を元に五斗長垣内遺跡の位置づけを考えたいと述べられた。
村上恭通氏の意見要旨は次の通り。
@ 炉床編年でW期(床上で直接火入れを実施、炉として溶解に必要な高温を維持できない)800度程度が限界だったと考えられる。
  また、出土する鉄製品は大型の鉄器はみあたらず、小物の鉄器製作であり、
  薄い鉄素材か棒状の小さい鉄素材を鏨切り加工で鉄製品を作った鍛冶工房と考えられる。  
  断裁鉄片も多数みつかっており、北部九州のような本格的な高温鍛接技術は入っていない。 
A 北九州で始まった鉄の鍛冶加工の弥生時代中期以降の歴史をたどると鉄器の普及は東から西へ前進するその過程で
  時代が後になるほど、鍛冶炉が簡易型に退化する傾向がみられ、この五斗長垣内遺跡の鍛冶炉も退化簡易型の鍛冶炉の
   流れの中にあり、羽口も出土していない。
B 鍛冶工房内で見つかった大型鉄製品は当初鉄素材か?と期待されたが、板状鉄斧と判明。    
  鍛冶炉の構造などからするとこの厚くて硬い板状鉄斧を鉄素材として使いこなせる技術はなかったと考えられる。

これらを合わせ考えてゆくと 現段階では この鍛冶工房が大和や卑弥呼など大集団とつながる広域流通の鍛冶工房とは考えられず、

周辺近隣集団へ小物鉄器中心の鉄器を提供する鍛冶工房であると考えられる。
(卑弥呼の時代にはこの鍛冶工房は消失。周辺の集落もほとんど消失して 卑弥呼の時代まで集落の継続もない)
この五斗長垣内遺跡の役割は 現段階では周辺近隣集落群の連携対象の鍛冶工房であったと淡路の狭い地域対象の鍛冶工房と考えたい。「五斗長垣内遺跡は卑弥呼・大和王権の時代につながる畿内の広域鉄流通の供給基地の先駆けではないか???」と
 古代のロマンを夢見てきましたが、どうもそうとは言えないというのが、現段階の結論のようだ。
 
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1012gossa02.htm   2010.12.15.  by Mutsu Nakanishi