山口市吉敷 萩焼陶芸家
田中講平さん自作の登り窯初窯・本焚きの見学記
【1月15日 初窯・本焚き】
[1103tnkahatsugama02.htm]
1月15日午後
登り窯を音連れると 陶芸教室の皆さんはじめ、数多くの見学者が詰めかけ、窯場の焚口を半円に取り囲んで窯焚きを見ている。
登り窯の焚口大口の前には材木端が積まれ、次々と焚口に投げ込まれる。
焚口を覗きこもうと顔を近づけると熱い 熱い。
忘れかけていた久しぶりのこの感覚、風の通り道。
大口の窯の中は真っ赤な炎が窯の奥へ奥へとすごい勢いで吸い込まれてゆく。本当にすごい迫力。 長くは覗き込んではいられない。
「これが登り窯か」と。
炉のタイプ・大きさは違うが、かつて鉄を溶解する電気炉の炉前 忘れかけていた久しぶりの感覚である。
登り窯の窯の中に入れられた熱電対温度計測器の値は300℃ほど。
窯の表面にふれると少し暖かくなっている。
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登り窯の窯焚きが始まる 2011.1.15. |
ちらちら腕時計の針を眺めながら窯の温度上昇速度の計測を始める。これも習性か
15分 30分 1時間 どうも 1時間で約100℃の割で窯の温度が上昇している。
田中さんから教えてもらっていた900℃近辺には夕方暗くなった頃 順調な温度上昇のようだ。
みんな 嬉しそうに窯の火を眺めながらの炉前。 待ちに待った登り窯 初窯・窯焚きが始まった。
登り窯の窯焚き 登り窯の大口焚口に材木端が次々と投げ込まれ、窯の温度があげられてゆく 2011.1.15.
順調に窯焚きが進行し、夕方暗くなりだした頃 窯の温度は900℃を越え いよいよ一の窯・二の窯の本焚きの準備が始まる。
一の窯の窯口の下の方に薪を投げ入れる小さな焚口の煉瓦が外され、開閉できるように準備される。
そして、一の窯の天井に登って 左右にある炎確認の小窓が開かれ、炎が噴き出すのが見える。
窯口は黄白色にまぶしくもう中を裸眼では覗けず、窯が高温になっていることがよく判る。
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一の窯の焚口の煉瓦がはずされ、焚き上げの準備
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大口の焚口は上部を少し残して閉じられると窯の天井部の左右に小さく開けられた窓からはまるで息をするかのように妖艶な炎がくねる。
もう みんな 一の窯の天井から登る炎に釘付けである。いよいよ 一の窯の焚き上げが始まる。
一の窯の天井の小さな小窓からは炎が噴き出し、作業の進行とともに妖しくくねる
見学者はみんな 一の窯焚き上げの開始に釘づけで 窯の天井の炎を眺める
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一の窯の小さな焚き口を開いては手早く薪を数本 投げ込んでは焚口を閉じる。無言の中に緊張感がみなぎっている。
窯口が開き、薪が投げ込み、そして閉じるたびに天井の炎が変化する。
登り窯の焚口が封鎖されると空気量が少なくなり、勢いよく天井窓から噴き出していた炎は淡い青みを帯びた還元炎となり、
ポッと窯の中に引き込まれてはまた灯る。
焚口が開かれると空気が流入し、天井窓の炎は勢いを増し、
投げ込み後 焚口が閉じられると炎は弱くなって、ポット息をする炎となる。
この炎を眺めながら 薪の投げ入れ位置 投入量 投入間隔を調整しつつ、窯の中にある作品を行きあげてゆく。
幻想的な雰囲気の中で 窯の中では酸化還元の雰囲気が調整される。 陶芸家 それぞれの腕の見せ所である。
温度は1000℃を越え、作品の釉は溶け出し、作品は舐める炎と反応し始める。
この繰り返しで 作品は1200℃越えまで 焚き上げられ、登り窯 窯変の「妙」
窯詰めされた作品が「萩」に生まれ変わってゆく。
火力の強い薪の投げ入れで さらに高温へ焚き上げる
一の窯の窯焚きが終わると 次に二の窯に移る。
同じ作業を繰り返し行って、二の窯に窯詰めされた作品も萩焼に変わってゆく。
順調に窯焚きが終了したのは16日未明。まる一日がかりの窯焚きである
窯焚きは雪が降り続く深夜も続き 16日明け方に窯焚きを終わりました
その16日朝は 夜から降り続いた雪が登り窯を祝福するかのように吉敷の郷を純白に包見込んでいました。
1月16日 窯焚きの終わった朝吉敷の郷は一面銀世界におおわれました
うれしい登り窯 初窯・本焚きが無事終了。
あたらしい陶房葉月の登り窯の完成です。
どんな作品が生まれるのか 楽しみな一日。
窯出しは19日 待ち遠しい窯出し。
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後日 田中さんより 初窯がうまくいったという便り・作品写真と共に 登り窯初窯記念の萩焼「左馬の茶碗」を送っていただきました。本当にうれしい もうまたとない素晴らしい経験でした。
また、「たたら」製鉄炉とこじつけると、風の通り道の山際に据え付けられた窯はたたらの縦型炉に近く、
簡単に高温と還元雰囲気が作られることにびっくり。
また大きさは違うが縄文人が煮炊きに使った焚口穴と土器を置く窯にもそっくりと。
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