田中さんの登り窯は一列に並ぶ窯が2基と比較的小型であるが、随分大きい。 また、築造過程ではさほど気にならなかったが、登り窯の傾斜が随分大きい。立派な登り窯である。
一番手前の大口の焚口に木片などを入れて燃やして、煙突へ抜けてゆく炎によって一の窯・二の窯を予熱し、その後 作品の詰められている一の窯・二の窯の窯口から直接薪を投げ入れて高温に焚き上げる。
そして、大口からの窯焚きで登り窯全体を約900℃程度まであげた後 大口の焚口を閉じ、今度は登り窯の横側にあり、作品の窯詰め後 封鎖されていた一の窯・二の窯の窯口の封を解き、順次、さらに高温に焚き上げて作品を焼き上げてゆく。
その窯口は煉瓦を外して、薪が投げ入れられる程度に小さく焚口が開けられ、薪を投げ入れては閉じる素早い作業の繰り返しによって 雰囲気を調整しつつ、窯の温度をさらに上げ作品を焼き上げる。
萩焼の焼き上げ温度はほかの産地での焼き物の焚き上げ温度が1300℃越えと高いのに比べると比較的低く1200℃越え程度であるという。
ここにも萩焼の特徴がある。
建物の横の材料置き場や、登り窯に沿って 燃料の木材端や薪がうずたかく積まれ、準備されている。その量の多さにもびっくりしました。
田中さんの話によると
「この登り窯で丸一日焚き続けて作品を焼き上げる。表の物置場や登り窯の脇に積み上げた材木端の山も薪も今回でほぼ全部使うことになる」という。
そんなに使うのかとびっくりしましたが、一昼夜丸一日焚き続けると聞くと納得。
「登り窯は一年に数度しか焼けない」「登り窯のコスト考えると登り窯では焼けない」とか 何度か耳にしたことがありますが、準備する作品量も準備する燃料 そして 焚き続ける体力。 そのスケールは大変だ。
急ピッチで窯詰めが進む登り窯の窯口。「窯の中 入ってもいいよ」と窯の中からひょいと窯詰め中の田中さんが顔を出す。
窯を覗くと 隙間なくびっしりと作品が詰められているが、まだまだ 窯詰しないといけないらしい。また、窯詰途中の煉瓦積みの壁が美しく、アーチも本当にきれい。 昔 建設中の高炉内部の煉瓦積みの美しさに見とれたのをふっと思い出す。