矢野遺跡T群から出土した3回立て替えられていた弥生中期末の鍛冶炉遺構 SB1035
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砂鉄が出土したSB2044
鍛冶工房のある矢野遺跡U群の北側に隣接する矢野遺跡T群(同じ国道192号線の下)から出土した鍛冶工房遺構。時期は中期末で3回の建て替えが確認された。最初の住居は径6.0m
深度54cm。
一回目住居廃絶後に南側2/3に重なって下端径5.8mの円形住居が構築されている。
6本柱構造で中央部から2つの鍛冶炉が検出された。北側鍛冶炉は長軸185cm
短軸60cm 深度10cmを測る長楕円形。中央部底面50X40cmが被熱により赤変している。また、南側からほぼ同規模の炭化物を充填した鍛冶炉が検出された。
炉東端部に位置するピット壁面と底面が被熱により赤変している。両炉共に下部構造は共通していて、床面から35cm程度掘削後に炭化物と地山土を交互に充填している。こうした炉の形態からT類鍛冶炉と推定されている。
周辺および柱穴から鍛冶滓・三角鉄片・鍛造剥片が出土。
3回目の住居はやや拡大し6.8X6.6mの規模で、2回目住居跡地に10cm程度の盛土を充填し構築。中央部に長軸185cm
短軸135cm 深度30cmの長楕円形鍛冶炉が敷設されている。鍛冶炉の下部構造は粘質土と炭化物層を互層に充填されている。炉壁面に沿って20cm内外の結晶片岩の割石が検出された。割り石は被熱による赤変が観察され、操業時には配されていた。
炉内から鍛冶滓や鉄片が、貼り床部より鍛造剥片が検出されたほか、床面からは赤変した砥石・40cm大の円盤状結晶片岩の割石〔片面に赤色顔料が付着〕が出土。住居西側床面より、長さ14cm幅5cm厚さ2cm
重量500gを測る鉄素材が出土した。
( 鍛冶工房であるとともに朱の生産工房にかかわった工房であったのかもしれぬ )