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6.
西暦570年を示す「庚寅」入り金象嵌の太刀出土
7世紀初めの古墳 福岡 元岡古墳群G6号古墳
太刀には暦使用国内最古例を示す製作年月日そして「十二錬鉄」の文字も
大歳庚寅正月六日庚寅日時作刀凡十二果 (には錬の文字と推定されている)
.2013.4.5. 1404motookakofun00.htm  by Mutsu Nakanishi
岡市教育委員会は2011年9月21日、同市西区の元岡古墳群(7世紀中ごろ)で、
西暦570年を示すとみられる「庚寅」や「正月六日」など19文字の銘文が象眼された鉄製の大刀が出土したと発表。
そして、2013年2月この太刀が、福岡市埋蔵文化財センターで公開され、
見に行ってきたと参考資料を福岡在住の友人が送ってくれた。
「元岡」は古代日本の大製鉄コンビナートが設置された地で、現在九州大学の伊都キャンパスがそっくりそのまま遺跡である。
そして、この大製鉄コンビナートの一角から出土した太刀に「よく練りきたえた刀」という意味が考えられる「十二果錬」の
銘が金象嵌で刻まれていたと聞いて、九州元岡製鉄遺跡を思い浮かべながら、この資料を作成。
太刀には「大歳庚寅正月六日庚寅日時作/凡十二果□」の金象嵌文字.
  大刀は長さ約75センチ。表面がさびで覆われていたが、エックス線撮影で、
  刀の背の部分に「大歳庚寅正月六日庚寅日時作刀凡十二果□」の19文字が
  象眼されているのが確認された。
  銘文は刀が作られた年月日(庚寅の年(570年)の庚寅の日(1月6日))
  などを記しているとみられ、最後の文字は「錬」の可能性もあるといい
 「すべてよく錬りきたえた刀」という意味が考えられるという。元岡古墳群元岡古墳群
福岡市西区の元岡古墳群で出土した鉄製の大刀。左はエックス線写真で
長円で囲まれた部分に「庚寅」など19文字の銘文が象眼されている
=21日午前、福岡市役所
元岡古墳群 元岡古墳群
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何度か出かけたことがある元岡遺跡群 現在は九州大学伊都キャンパスになっている丘陵地。 
その造成工事で古代の多数の製鉄炉が建ち並ぶ元岡製鉄遺跡群や古墳群(元岡・桑原遺跡群)等が見つかり、この地が6・7世紀 大陸・朝鮮半島と緊張関係にあった大和王権の守りの最前線基地であったことが明らかになった。(この時代 新羅が勢力を伸ばし、556年大伽耶を併合 660年百済滅亡 663年大和が大敗北した白村江の戦いなど北部九州には土塁が築かれ、防人が配備された。)
日本で製鉄が始まった5世紀〜6世紀 やっと安定量産技術を確立し、大量の鉄が必要とされたこの地にいくつもの製鉄炉が建ち並ぶ官営の製鉄コンビナートが形成され、大量の鉄が量産された古代製鉄の最前線がこの元岡製鉄遺跡群である。 
そんな時代に 古代の先進大製鉄コンビナートがある地の大和と関係深い前方後円墳で、「何回も何回もよく練りきたえた」の意味としてよく知られる「百錬鉄」と同意味と推定された「十二果錬」の金象嵌の文字が刻まれた太刀が発見されたというのである。
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報道や現地説明資料では太刀に象嵌された太刀製造の年月日が実在する年で、しかも朝鮮半島から伝わった暦使用の国内最古例であることに興味が集中している。しかし、570年という年代を考えると「生産を開始したたたら製鉄技術を大量生産が出来るたたら製鉄の安定量産技術の確立」に大和王権あげて取り組む過程にあった時代である。
私には、そんな時代に日本で製鉄された最先進の鉄を使い、確立された量産製鉄技術に基づいて、後に建設する官営の大製鉄コンビナート建設地の首長がこの太刀を持っていたことに興味がある。
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北部九州は 大陸・朝鮮半島から一番先に鉄の技術が入った鉄の先進地。
古くからこの地には製鉄技術があり、大和と同じくこのような太刀を鍛える技術が会った可能性もある。
既に先進技術を習熟した技術首長がこの地にいたのか それとも技術を持って この地に大和から技術屋が乗り込んだのかはよく判らないが、大陸・朝鮮半島と対峙するこの元岡の地に国を挙げての官営の大製鉄コンビナートが建設される。 
「この元岡に建設された国を挙げての官営の大製鉄コンビナート建設・経営の論功がこの太刀だったのかも知れぬ」と。

福岡市教育委員会文化財部資料「7世紀の有力者の墓の発見?   -西区元岡古墳群G6号墳-」より
関連年表 激動の古代 
大陸・朝鮮半島と緊張関係にあった6・7世紀
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  日本出土銘文太刀剣一覧
(古墳時代)

【2007.6.に訪ねた元岡製鉄遺跡群 九州大学伊都キャンバス】
九州大学伊都キャンパスは福岡市の西端 糸島半島の付け根の丘陵地帯を切り開いて作られた広大な土地にあり、
このキャンパスの敷地全体が、すっぽり 古代の元岡・桑原遺跡群でこの丘陵地や谷筋から、数多くの古墳や古代の製鉄遺跡が出土している。特に製鉄遺跡群は古代 大陸・朝鮮半島と対峙する大和の最前線基地の鉄需要をまかなう大製鉄コンビナートであった。 今回金象嵌太刀が出土した地点は 北の海岸部から南に延びる丘陵地の南東端に近い山腹にある元岡古墳群のG群の古墳である。
2007年6月 まだキャンパスの移転工事が続く中、この元岡製鉄遺跡群を訪ね、九州大学伊都キャンパス内外の丘陵地や谷筋を歩きました。

福岡市の西端丘陵地にあり、九州大学伊都キャンパスの敷地工事に伴う調査で 敷地全体から 
8世紀大陸・朝鮮半島と対峙する大和の最前線にある古代の大製鉄コンビナート(元岡製鉄遺跡群や
前方後円墳などの数多くの古墳群など数々の遺構・遺物が出土


元岡・桑原遺跡群

【金象嵌太刀出土 元岡古墳群G6号古墳 資料】
1.
福岡市埋蔵文化財センター 2013.2.2.
福岡元岡古墳群 G6号古墳出土 庚寅銘太刀速報展示 解説資料解説資料
2. 福岡市教育委員会文化財部埋蔵文化財第2課 「7世紀の有力者の墓の発見?  西区元岡古墳群 G6号墳-
  https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/25547/1/230927-02.pdf 
3. 菅原正人(福岡市教育委員会)福岡市元岡・桑原遺跡野概要 -奈良時代の大規模製鉄遺跡- 
  https://www.kuba.co.jp/syoseki/PDF/3274.pdf
【参考資料 和鉄の道】
1.
瀬田丘陵の源内峠製鉄遺跡・野路小野山遺跡を訪ねて 2007.1.
大型量産製鉄炉を確立し、古代官営大製鉄コンビナートに発展させた近江の製鉄技術    .
  https://www.infokkkna.com/ironroad/dock/iron/7iron03.pdf
2.
古代 九州の大製鉄コンビナート 福岡 元岡製鉄遺跡群を訪ねて  2007.6.
  https://www.infokkkna.com/ironroad/dock/iron/7iron12.pdf
3. 和鉄の道【7】口絵2007  2008.1.
  https://www.infokkkna.com/ironroad/dock/iron/7iron00.pdf
  1. たたら製鉄の原点を探して    2. たたら炉の 製作過程 古代のたたら炉の製作過程
  3. 古代製鉄炉の変遷  たたら炉の大きさと構造の変遷
  4.  8世紀 モデル化された量産古代製鉄炉を完成 地方拠点に大製鉄コンピナートが出現
 
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  1404motookakofun00.htm   2013.4.5.  by Mutsu Nakanishi