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【From Kobe  2010年2月】
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今年も節分の鬼によせて 「福は内 鬼も内」
                                  by  Mutsu Nakanishi   2010.1.30.
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節分が近づくと毎年鬼が気になる。
毎度同じようなコメントなんですが・・・・
「鬼は外 福は内」と「福は内 鬼も内」 さあ どっちでしょうか・・・・                 .
鬼の話にはいつも何か後ろめたさや哀れさがついてまわり、鬼は悪者といいながらも一方では「憎めない」
「鬼は本当に悪者なのか?」の思いがある。
鬼の話は自分たちと異なる集団を「鬼」として排除してきた歴史のなごり。
「いつも一生懸命働き、つくしながら、だまし討ちで退治される」。
そんな「鬼」の中に鉄の集団もいて、「鉄」と結びつく鬼伝説が各地に残っている。
昔話や伝承をよく読むと 「鬼」とされた集団が「新しい技術・文化を持ち込み、その地域を開拓し国を豊かにさせながらも」退治されてゆく。こんな話の筋書きが「鬼は悪者といいながらも、一方では「憎めない」」そんな思いを呼び起こすのかもしれない。
歴史の名残利と書きましたが、果たしてそうでしょうか  
この「鬼」「ばばぬき」の構図が最近はげしくなっていると感じることが多い。

「自己責任だ」の集団の大合唱に「KY 空気が読めない」と排除する。
いじめの構図の中にもこれがある。「アラフォ-」が下火になったと思ったら、今度は「アラカン」だという。
本当に仲間といつも一緒でないと不安な社会でありながら、たえず「鬼」をさがそうとし、集団のそばに「鬼」がいると安心する。そんな日本の構図が現代まで時として浮かび上がってくる。
知ってか 知らずか この構図の中に 自分が巻き込まれていることにはっとすることがある。
一旦仲間から外れると 今度は自分が「鬼」にされてしまうとの恐怖感も・・・・。
『赤信号 みんなで渡ればこわくない」と本当に歯止めの聞かぬ社会になっていないだろうか・・・
周りとの絆が希薄になっている無縁社会が広がりつつある中「鬼」にされた人が なんと多いことか・・・・・。

最近のベストセラーに時代の先端を走る女性の「猛烈幸福論」に対して「努力だけで幸福になれますか???」と応酬する書の両方が書店の店頭に並んでいる。 どちらが本当なのだろう・・・・
新しい政権になって 政治主導の事業仕分け が喝采を浴びているが、これも「鬼」退治の構図が見え隠れ。本当に不可思議である。
いつから 政治家が最も優れた分野の専門家になって右・左と即刻判断する能力をつけたのだろうか・・・・
それも 政治家の判断能力の欠如がリーダー不在を招き、一番課題の時に・・・・・。
「鬼」を排除するより、それだけの判断力あれば 能力のある集団を使いこなせばよいのに・・とそのやり取りの傲慢さにやりきれなさを感じています。「説明責任」とやり込める声が「鬼」のレッテル張りに聞こえる。
老齢がそういわせるのかもしれませんが、今ほど「共に生きる」ことを必要と感じる時はない。
「鬼」を作る話に迎合することなく、その中味を自ら考え follow する姿勢がほしい。
あのすごい憤怒の形相をした蔵王権現三体を本尊とする吉野の金峯山寺ではどんな「鬼」も迎え入れる。

先日桃太郎伝説の吉備「鬼ノ城」を訪れましたが、 郷の民衆に根強く伝えられてきたもうひとつの桃太郎伝説として、「吉備の鬼「温羅」は 大和に支配される前の吉備を豊かにした開拓者」と10年前にはほとんど聞かれなかった話も広く聞かれました。

物語を現代風に改変するのでなく、歴史に裏付けられた中にあるものを見よう。 
言葉の向こうに「何かおかしい」と質を感じ取れるのも日本人の特質 
目をつぶらずに 中にある質を見たいものだと思っています。



年々盛んになって 各地で繰り広げられる節分の鬼追式。
「鬼を作る側からは 外れよう」「鬼にされた人たちに目をむけよう」
かつて異文化集団が既存集団を脅かす集団として「鬼」にされる一方、開拓神・郷土の神として伝えられてきた「鬼」たちの生き様が説話の中に刷り込まれている。
そんな眼で鬼の説話を読めば、新しい視点が生まれるかもしれません。
節分の季節になると毎年 同じことを言っているようですが、
「福は内 鬼も内」 みんなが共生できるよう 手をひろげよう

     20101.30. 神戸 Mutsu Nakanishi
 

【参考 「東北の鬼」 和鉄の道 鬼のfile より  】

岩手県北上市では「あの高嶺 鬼住む誇り」と誇らしく歌う
青森の岩木山(巌鬼山)の山麓にある鬼沢集落は「鬼の里」を名乗り
鬼神社を祭り、「鬼の里鬼沢」の「ねぷた」が弘前の街を行く

図面の上で大きくしてご覧ください

1002kobe00.htm    2010.2.5.  by Mutsu Nakanishi