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  愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター 国際シンポジューム
12.「鉄 と帝国の歴史」  聴講記録   2008.11.29.
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0812ehime00.htm   2008.12.15.  by Mutsu Nakanishi

鉄の新技術で大帝国を築いたヒッタイト・モンゴル・中国の鉄技術と歴史的役割
「鉄」が巨大帝国を作り上げ、大きな社会変革を成し遂げた」 そんな「鉄・鉄技術」とは何か?
1. 「人類が始めて手にした鉄の故地  ヒッタイト」  基調講演 アナトリア研究所長  大村 幸弘氏
2. 「東アジアにおける鉄の故地 中 国」        基調講演 中国社会科学院考古研究所長 王 巍氏
3. 「チンギスハンの大モンゴル帝国 における鉄」  基調講演   新潟大学教授  白石典之氏
4. パネル討論 「鉄と帝国の歴史」 
   コーディネイター  愛媛大学教授  & 東アジア古代鉄研究センター長 村上恭通氏 
      パネリスト      上記基調講演 3氏
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 ■ PDF 要旨記録 File シンポジューム「鉄と国家の歴史」の要旨抜粋  by Mutsu nakanishi
11月29日 松山で愛媛大学東アジア古代鉄研究セン ター 国 際シンポジューム「鉄と帝国の歴史」 
のご案内をいただいて出かけました。
「巨大帝国を作り上げ、大きな社会変革を成し遂げた」 鉄。 
そんな「鉄・鉄技術」とは何なのか?
「鉄は国家なり」といわれる巨大 な鉄のインパクトについてのシンボジュウムは願ってもないこと。
  ・世界で始めて人工鉄を操ったヒッタイト
  ・何も無いモンゴル高原に興り、鉄の戦車群の騎馬軍団でユーラシア大陸を駆け抜けたチンギスカン 
 ・秦の始皇帝・漢に始まる巨大な鉄の力を見せ付けた 中国
 ・たたら製鉄の日本。
初めて人工鉄を作り(通説) 鉄器時 代の到来を演出したという「ヒッタイトの鉄」をトルコ アナトリア半島で発掘。
ヒッタイトの鉄の故地「アリンナ」を特定し、さら に最近「ヒッタイトの鉄 
世界最古の人工鉄」 が通説よりもさらに遡れると発表して、 世界を驚かした大村幸弘さん。 
鉄の戦車群の騎馬軍団でユーラシア大陸を駆け抜 け、世界制覇を成し遂げた 遊牧の民チンギスハーンの大モンゴル帝国。
そのベールに包まれた「チンギスカンの鉄」の発掘 を続る白石典之さん。
東アジアの「鉄」の中心地 中国。 その中国考古 学の中心的指導者 王巍 さん
日本のたたら製鉄研究のトップリーダ- 村上恭通 さん。
これら世界の「鉄」の故地で実際に現在も発掘の現場に立っておられる4人のトップリーダーから
「鉄の歴史」「直近の生の発掘現場の話」が聞けるまたとない機会。
ま た、たたら製鉄・古代鉄文化研究のナショナルセンターとして 
着々と歩みを続ける愛媛大学東アジア古代鉄文化センターの成果が聞けるのも楽しみ。
また、私にとっては今一番の興味は 日本で た たら製鉄に発展してゆくプレたたらの技術は何なのか・・・
そ んな 疑問にも 答えてもらえるかもしれない。

鉄の起源・鉄の社会変革に 対するインパクト 常々日本の「鉄」でも論じられてきたことを世界の事例の討論。
しかも最新の発掘調査の謎解きとそれ を踏まえての議論には書物では分からぬ具体的な話に釘付け。
「鉄」の持つ魅力でしょうか 異分野 が全く違和感無く融合して共通の視点に到達した面白いシンポジュウでした。

愛媛大学東アジア古代鉄研究セン ター  国際シンポジューム
「鉄と帝国の歴史」   まとめ
鉄の新技術で大帝国を築いたヒッタイト・モンゴル・中国の鉄技術と歴史的役割
「鉄 は国家なり」 その原動力は 単に「鉄」を有していたからではなく、 
常に鉄の先端技術 「良質 の鉄 『鋼』 」の技術保有が周囲を圧して、
大きな社会変革・帝国成立 を成し遂げた
 1.  トルコ カマン・カレホユック遺跡の発掘で人工 鉄の起源は少なくともヒッタイト以前にまで遡れる。 
   ヒッタイトはそれ以前の鉄の生産技 術を受け継ぎ発展(品質・生産させることによ り、帝国を築いた。 
   その「鉄」が「良質の鉄・鋼」であ ることがわかってきた。 
   「鉄の起源」を探る1万年の 歴史が整然と堆積して詰まるタイムカプセルが「カマン・カレホユック遺跡」 
     
 2.  鉄の技術は当時の先端技術は 時代のメルクマール であり、人類全身の指標 
   中国最古の人工鉄器は紀元前7世紀  西周後期 河南省西部の山門峡市の貴族の墓 から出土の銅柄鉄剣(玉
       柄銅心)鉄は塊錬鉄。その後 それら先端技術を担った国 々が戦国時代を経て数々の鉄の品質・生産の 先端技術を
  編み出しながら国を作ってきた。 
  秦の始皇帝に始まり、前漢・後漢の 時代 鉄の産地に鉄官が置かれ、国の基幹と なった。
     【 編み出された鉄の品質・生産の先端技術 】 

     ● 鋳鉄の表面脱炭法や鍛造・焼き入れなど錬鉄の硬化法による硬さの改善  
     ● 鋳鉄脱炭による「鋼」の製造技術確立・油焼入れ法 
     ● 大型炉による鋳鉄法による大量生産 百錬鉄の反復鍛造 など 
  
 3. 鉄資源のない「モンゴル」が周囲 の鉄山・鉄の工人を次々と獲得し、鉄資源 と鉄器製造の先端技術を得て、   
   アウラギ宮殿遺跡の一角に大鉄器コン ビナートの鉄器量産体制を作り上げ 大モン ゴル帝国・世界支配を成し遂げた。 

私にとって一番の驚きは ヒッタイトの製鉄の中心地「アリン ナ」特定の謎解きの面白さと
ヒッタイトの故地アナトリア半島の鉄の起源を探るタイムカプセル「カマン・カレホユック遺跡」の存 在。
10000年もの人の痕跡が整然と積 層して遺丘として残っているなんて・・・。
このタイムカプセルの地層を一つ一つ 丹念にはがし、すでに人工鉄の起源はBC20以前に遡れ、鉄の起源に迫ってゆけると聞いた。
 「推論を立てて 惑わされなく自分 の基軸で発掘の現物を直視する」と語られる発掘調査の面白さには 
  技術屋・工学や科学の大事にしてきた手法そのもので、本当に同感。
 

トルコ・アナトリア半島 カマン・カレホユック遺 跡

BC19世紀の層から出土した ヒッタイトの「鋼」
世界を動かした古代鉄の先端技術は「良質の鉄・鋼」の生産技術。 これは その 通りだろう。
日本においても 大和鍛冶・韓鍛冶の言葉があり、また、各地に渡来の製鉄神・開拓神の伝承が残る。
そして もうひとつ  「焼入れの熱処理技術」が議論されたのにもびっくりでした。
もう 紀元前に「鋼」の焼き入れが発 明され、「水焼き入れ」「塩水焼き入れ」「油焼き入れ」が「良質の鉄」を作り出す技術として すでに発明されていたこと初めて認識しました。
「鉄鋼は剛柔なり。 時に応じ て その態を変える」 と「鋼」について 教えられてきましたが、
もう紀元前にこれらの技術を操り、それらが「良質の鉄」を生み、社会を変革を成し遂げてきたこと 
しかも、それが今につながっていることに感激でした。

ま た、愛媛大学 東アジア古代鉄研究所は この12月から中国社会科学院と共同で 
秦の始皇帝が手に入れた四川省の製鉄故地の調査が始まると聞きました。
本当に 次のシンポジュウムが楽しみである。

今 回のシンポジュームで基調講演された3氏の話とともに 
今回のシンポジューム「鉄と国家の歴史」の要旨抜粋を下記PDF fileにまとめました。
ご参照ください。
■ PDF 要旨記録File シンポジューム「鉄と国家の歴史」の要旨抜粋  by Mutsu nakanishi
チンギスハンのモンゴル 高原の鉄山攻略過程
 チンギスハ ン アフラガ宮殿遺跡の
鍛冶工房から出土した鉄
中国最古の鉄  塊錬鉄

まだまだ 知りたいこと も 沢山残っています。

この人工鉄の生産(製鉄) は「どんな設備・仕掛けで どんな風に」おこなわれたのか???  
この謎はまだ解けていない。
次は 日本の事例も含めて  討論することによって もっと技術の先端性が解明されるだろう。
日本や世界に 伝えられている多くの製鉄伝承に、今回の討論でもスポットが当てられましたが、 
さらに数々の伝承にも光が当たり、その解釈や遺跡発掘を通じて、更なる鉄 の技術解明が進むことを期待したい。
日 本で箱型炉・縦型炉の製鉄炉が確立し、製鉄が始まる5世紀半ばから6世紀。
でも たたら製鉄と呼ばれるこの製鉄技術は 他に類型も無く 本当に突然 日本で始 まる。 
このたたら製鉄が日本で始まる前夜には 日本各地に精錬鍛冶と呼ばれる鉄素材を精製する鍛冶技術 が展開され、
大量の鉄滓が随伴する。
でも この精錬鍛冶技術とたたら製鉄技術とは別というのが日本の通説。
精錬鍛冶は製鉄技術に結びつかないと言う。

日本各地には 植物の根にたまった褐鉄鉱などの 「高師小僧・尾鈴」伝承などのプレたたらの時代の製鉄関連伝承や
大陸・朝鮮半島からの鉄技術移転と渡来人伝承が本当に数多く残っている。
日本の製鉄開始はあまりにも大 型で精密な操炉管理が必要なたたら製鉄炉の技術に偏しているのではないか・・・・
精錬鍛冶の地炉での精錬の一部 は精 製というより、製鉄ではないか????  
そんな思いが私の中で いつも  もやもやしている。

根拠は無いのですが、 多数の製鉄伝承の存在
種 鉄を地炉に入れてそれ を太らす沸かし付け
簡単な小規模炉に 餅轍と炭を入れて加熱反応させて製鉄実験をして「鉄」を作った釜石の実験炉 
そんなイメージを膨らませて  種鉄に鉄素材や鉄鉱石を加えて高温反応を形成できれば、小規模な鉄塊が作れるのではないかと・・・・。
世界の製鉄技術から 何かヒ ントがえられるのではないか・・・・と。


【参考 資料】
1. 愛媛大学東アジア古代鉄研究セン ター 国際シンポジューム 「鉄と帝国の歴史」
2. カマン・カレホユック 遺跡の概 要 https://www.jiaa-kaman.org/excavation.html       
中近東文化センター アナトリア考古学 研究所 HP より
3. 岩手県立博物館便り  NO.106  2005.9. より  https://www.pref.iwate.jp/~hp0910/tayori/106p2.pdf    
赤沼 英男 研究ノート最古の 鋼片の検出とその意味
  - ヒッタイト帝国が鉄生 産に果たした役割の再検討 -
4. 和鉄の道 by Mutsu Nakanishi  https://www.infokkkna.com/ironroad/2008htm/2008iron/8iron02.pdf
愛媛大学 東アジア古代鉄文化センター  シンポジューム 
「中国西南地域の鉄から古代東アジア の歴史を探る  鉄の起源を求めて」 に参加して
 ヒッタイト・ツタンカーメンの鉄そ して四川をつ なぐ西南シルクロードがたたらの源流 ??? 
5. 和鉄の道 by Mutsu Nakanishi https://www.infokkkna.com/ironroad/2008htm/2008iron/8iron06.pdf
 愛媛大学アジア歴史講演会 「モンゴ ル・アウラガ宮殿における鉄鉄器生産の一様相」 

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0812ehime00.htm   2008.12.15.  Mutsu Nakanishi